ミー子

ぉぁああおうぅぅ

Cheap Trick 'Don't Be Cruel' MV における完全な静寂

2'35" の「お見合い」の演出、どこから思い付くんだろう?

曲構成の「どこかのパートが単独でアウフタクトで先導して、楽節アタマでトゥッティがガツン!」という段取りが前提で起こりうるアクシデント、つまりすぐれて「音楽的」な発想に則った演出。

この曲、この MV、 アレンジも、演出も、その両者の連携も、いろいろめちゃめちゃに細かいけど、殊にこの箇所の「完全な静寂」が好き。鋭敏な聴覚による演出。

バンド演奏の轟音が、不測の事態で突然止まって、そこにじかに隣り合って静寂が現出するのを、暗騒音と、ごく微細な物音、「ベースの弦を指が擦る音」「ドラムスティックがスネアのリムに触れる音」「サングラスの蝶番の音」を置くことによって、示す。それらが如実に聴き取れるほどの静寂、という演出。わざわざ別録りで。

場の戸惑いの空気の表現を、完全な静寂を以てする。ついひとこと「あれっ?」とか入れそうなところを。

誰かひとり、例えばヴォーカリストに他のメンバーの視線が集まって「お前きっかけだろ」と責めるとかではなく、その場に居合わせる全員が状況を把握出来ずにいるのが面白い。

2'38" のカットで、遠景のコーラス隊のひとりが、流れをぶった切られて振付モードを解除して素に戻る、とか、これ演技なわけでしょ? 細かい。

このシーンに始末を付けるのも、MV オーラスの(カメラのパンからの)オチも、ドラマーの人(Bun E. Carlos)、というのが、説得力がある。

 

アレンジでいうと、1950年代ロカビリーをなるべく尊重した1コーラス目から、ブラシがスティックに持ち替えられ、パワー・コードが炸裂して、ロック全開になるところがカタルシス

冒頭のコーラスは 1'43" と 3'09" のを持って来てる*1。3'09" のほうはその少し前から始まってるように聴こえるけど、これはリヴァーブのリヴァースだよね。2'09" の、ギター・ソロ明けのリード・ヴォーカルの歌い出しに掛かってるのと同じやつ。

 

0'08" は「井上明美さん」と聴こえる。

 

この曲のカヴァーは他に、私はあがた森魚「つめたく冷やして」しか知らなかったけど、Keith Emerson にも Devo にもある。Devo のは、アレンジがテクノに改変されてることよりも、ヴォーカルがプレスリーまんまなことに笑える。

 

追記

オープニングはシングルのジャケのデザインなんですね。

*1:追記 2023年06月26日

3'09" のほうは転調後で1音上がってるから、1'43" のほうですね。