ミー子

ぉぁああおうぅぅ

「魅せられて」

この過去記事の最後で、

筒美京平作曲・編曲の『魅せられて』こそ「造形の鬼」だけど、これについては別の機会に。」

と書いたのが5年前。

今が「別の機会」です。It is next time!*1

「魅せられて」

作詞:阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平、歌:ジュディ・オング、1979年。

 

造形の鬼。

「雰囲気」においても超絶的だけど、特筆すべきは「造形」の、着想の突飛と、念入り。

間奏と後奏の「運命の動機」の畳み掛け(0'42"、1'31"、1'55"、2'37"、3'26")。これらがイントロから派生した、と見るより、逆にイントロが、この動機を吃らせたもの、なのではないか。

パーツとしてのメロの造形のいちいちのポエティックさと、それを組み上げる構成の着想との、両立。というか拮抗。

歌メロが、このインストの動機と、密度・求心性において軌を一にして、16分音符単位で「器楽的に*2」動く中、唯一サビの入り(0'47")だけが8分音符で上行して、最高到達点がトニック上の「9th」(0'49")。ハープのグリッサンド

1コーラス目のサビメロが繰返しの途中で間奏にディゾルヴする着想(1'21")。2コーラス目のサビは繰返しに入ることなく決然と間奏が始まる(2'25")。

 

「Uh― Ah― Uh― Ah―」の箇所(1'00")こそがこの曲のミステリアスさの核かも知れない。モーダルな魅力。とくに「Ah―」ではメロと和音に 6th(f)が出て来るのにベースがずっと 5th(e)なこと。弦のトレモロのクレシェンド、ディミヌエンドとハープのアルペジオのアレンジがミステリアスさに輪を掛ける。

 

最初のシンバル一発でもう世界が現出する。この曲は「16分休符始まり」だから、始まりの小節線を明示する必要がある、それを何かの打楽器でやる、という要請から来てるのかもだけど、このシンバルの音色には、そういう役回りだけではない効果がある。

「雰囲気」ということでいうと、ブズーキっぽい撥弦楽器ギリシャを演出する、という効果は確かにある。「エキゾティシズム」かもだけど。

アレンジは一聴非常にオーケストラルな印象だけど、オーケストラ楽器で使われてるのはじつは弦楽とホルンとハープだけだろうか? 弦楽高音部とユニゾンやってるのはブズーキなのかな? もしかしたらピッコロかフルートがいるのかもだけど、だとしても終始ユニゾンでヴァイオリン・パートを補強する役割に徹してる。

 

「造形の鬼」で当ブログを検索すると、この曲と、Gnidrolog がヒットする。

 

関連記事:

*1:Lewis Carroll が初めて『アリス』の物語を Liddell 三姉妹に向かって語った、1862年07月04のボートでの小旅行、いわゆる "golden afternoon" についての記憶を、Alice Liddell 自身が後年述べてる。Carroll(= Mr. Dodgson)が話を中断し、三姉妹が再開をせがむシーン:

Sometimes to tease us ― and perhaps being really tired ― Mr. Dodgson would stop suddenly and say, 'And that's all till next time.' 'Ah, but it is next time,' would be the exclamation from all three; and after some persuasion the story would start afresh.

これは Stuart Collingwood が "The Life and Letters of Lewis Carroll" の中で引用してるそうなのだけど、私はこの Collingwood 本は読んでなくて、Martin Gardner "The Annotated Alice" の、"Alice's Adventures in Wonderland" 冒頭の詩への註の中で、引用が引用されてるのを読んだ。

そういえば、

この過去記事中の

I'd rather see that done on paper.

は私の渾身の引用だったのだけど、どなたからも反応頂けなくてさみしかった。これ "Through the Looking-Glass" > 'Humpty Dumpty' ですからね!

*2:「器楽的な歌メロ」といえばさいきん渡辺美里My Revolution」を聴いた。作曲は小室哲哉